札医大の研究室から(33) 片寄正樹教授に聞く(十勝毎日新聞?札幌医科大学 包括連携協定事業)

十勝毎日新聞ロゴ
 スポーツ選手を悩ませるけが。帯広市出身で、スピードスケート五輪金メダリストの清水宏保選手ら多くのアスリートの検診やリハビリにかかわり、ソルトレークシティーとトリノの2回の冬季五輪で日本選手団のトレーナーとしても活躍した札幌医大の片寄正樹教授に、スポーツによるけがの予防について聞いた。(聞き手?安藤有紀)

片寄正樹(かたよせ?まさき)

 1963年帯広市生まれ。帯広柏小、帯広第三中、帯広柏葉高、札幌医科大学衛生短期大学部を経て99年カナダアルバータ大学大学院理学療法学修士課程修了。2000年より日本オリンピック委員会医学サポート部員として選手のリハビリ指導などを行い、オリンピック?パラリンピック組織委員会医療サービス部アドバイザーに就任。20年の東京五輪では選手村の総合診療所で理学療法部門のマネジメントを担当予定。07年より現職。

札医大の研究室から(33) 片寄正樹教授に聞く 2019/6/29

安藤:スポーツのけがの予防は可能か。
片寄:スポーツ外傷障害は大きく二つに分類できる。一つは、瞬間的な力が加わったときに起こる骨折や大きな捻挫など。もう一つは、野球で肘を壊すなど同じ動作を繰り返すことで起こるものを指す。
 けがの背景には、いろいろな体のメカニズムが影響している。例えば栄養やホルモン、身体能力の低下など。それらの発生メカニズムを理解することで防げるけがもある。

 体の使い方がカギ

片寄:予防で重要なのは、体の使い方。これまでの研究で、けがをしやすい体の使い方、けがをしにくい体の使い方があることが分かってきた。外国の研究で、アスリートのけがを予防するメニューを開発して3年間実施したところ、膝の前十字靱帯(じんたい)損傷の発生率が半減した報告もある。現在では、サッカーの「FIFA11」をはじめ、競技種目ごとに予防プログラムが開発されている。

安藤:予防に必要なことは。
片寄:けがの予防には三つのステージがある。1次予防はトレーニングや食事などでの体づくり、2次予防は専門的な医師の検診、3次予防はけがをした後のリハビリによる再発防止。特に大事なのが再発防止。どこかに痛みが出ても安静にすると症状はなくなるため、運動を再開してしまう人が多いが、根本的な原因にアプローチせずに運動すれば再発してしまう。一つのけがが別のけがを導くこともある。しっかりリハビリをして再発しない体づくりが重要。

安藤:家庭でできることは。
片寄:1日5分でも自分の体を振り返る時間を持ってほしい。足の爪がどのくらい伸びているのか、筋肉は腫れていないか、関節はどこまで動くのかなど、普段から自分の体を知っておくことが大切。痛みが3日続いたときは我慢せず、早めに医療機関を受診してほしい。

安藤:十勝へのメッセージを。
片寄:十勝は五輪アスリートが多く生まれている土地。トップアスリートを支えるメディカルスタッフも多い。その知見は一般の方の健康管理にも役立つ。人生百年時代と言われる中、スポーツは健康に体を維持していくために大切なもの。医療機関を活用してけがを予防しながら、安全に運動をしてほしい。

発行日:

情報発信元
  • 経営企画課企画広報係