理事長?学長室だより-1号-(平成28年4月7日発行)
●はじめに
平成28年度から、札幌医科大学理事長?学長を拝命させていただきました。
札幌医科大学の一層の発展に尽力する覚悟でいますので、教職員、関係者の皆様のご支援、ご協力をいただけますようよろしくお願いいたします。
私が理事長?学長に就任し、初めての理事長室だよりということで、先日、私の就任挨拶でもお話ししましたが、改めて就任にあたっての私の今後の抱負について少し述べたいと思います。
●大学の目指す道
既にご存知のように、全国の全ての大学は大きな変革の只中にあります。国立大学は国の方針により、将来大きく3つのタイプの大学にその目指す機能が分かれていくことが予想されます。
第一は世界で卓越した教育?研究を展開できる大学で、主にいわゆる総合大学が対象になると思われます。第二は全国的あるいは世界的に特色ある教育?研究を遂行できる大学、第三は人材育成や課題解決で地域に貢献できる大学です。この流れは、国立大学はもとより公立あるいは私立大学にも当然その影響を及ぼしてくるものと思われます。
本学のこれまでの65年以上の歩みを振り返ってみると、建学の精神を拠り所にし、最高レベルの医科大学を目指すことを理念に掲げ、実践してきました。
これはまさに、我々の大学が今後の国立大学に要求される第二と第三の機能を既に開学以来果たして来たことに他なりません。すなわち、我々の目指すところは今までも、またこれからも困難な道ではありますが、「医学?医療の攻究と地域医療への貢献」です。このことを、理事長?学長就任にあたり改めて確認したいと思います。
●施設整備について
現在進行中の第2期中期計画については、その進捗が既に半ばまで達し、その成果は順調であると思っています。既にこれまでの3年間の成果を踏まえ平成28年度の年度計画も作成されています。何よりも、これを確実に継続、実施することが重要であると考えています。
同時に、順次完成する教育?研究棟の適切な運営、研究用備品配置の計画などにも配慮すべきと考えています。次の中期計画に盛り込むべき事項も多々あると思われますが、教職員の皆さんとコンセンサスを形成しながら教育?研究設備の充実を図っていきたいと思っています
新しい教育?研究棟の建設ばかりではなく、継続して使用する現教育?研究棟のリフォームとその後の活用も重要な課題です。現保健医療学部棟のリフォーム、活用方法については既に検討が行われていますが、保健医療学部の教員の方々の意見を十分に聞きながら進め、納得のできるものにしたいと思っています。
●附属病院について
附属病院に関してですが、附属病院の上位目標が安全で質の高い医療を提供することにあることは言うまでもありません。そのことは、附属病院の理念?基本方針にある通りです。利益を追求することは附属病院の上位目標ではありません。しかし、安全で質の高い医療を提供できるような環境を作り出し、それを維持し、さらにその成果を患者の皆さんに還元するためにも、附属病院における適切な利益の確保は不可欠です。これをなくしては、附属病院、ひいては大学の円滑な運営は困難です。
そのためにも、附属病院の経営基盤の強化は重要であると考えています。今後は、病院長をはじめ病院の執行部とも十分に相談し、この目標に向けて必要な方策を取っていきたいと思います。
●学生の確保について
入学者に関しては、アドミッションセンターが中心になり、北海道の各高校を継続的に訪問し、その結果、優秀な高校生を確保できている状況があります。今年度からセンターの体制充実を図ったことにより、これまで以上の成果が期待されるところです。
医学部入学者では以前は北海道外出身者が多く、その大部分は初期研修、専門医研修をともに道外で行い北海道内には定着する傾向が低いことが指摘されていました。アドミッションセンターが中心となり、推薦入試に「特別枠」、「地域枠」のみならず、一般入試の「北海道医療枠」を設置し、入学者を選抜する制度が構築されています。その結果、平成28年度入試では、実に約80%が北海道出身者となっており、今後も北海道の医療を担う優秀な若い力を確保したいと考えています。
●研究について
研究についてですが、神経再生医療、がんワクチンなどに見られるように、先端医学研究を基盤とした橋渡し研究の実施に対するサポートは大学の責務です。さらに、基礎講座も含め基礎研究のための基盤整備も必要です。現在、注目を集めている橋渡し研究も、その成果が昨日、今日に得られたわけではありません。10年前、20年前から多くの研究者が関与し現在の状況が作り上げられてきたことは明らかです。すべての研究の種が大きく花開くわけではありませんが、種を蒔かなければ実を刈り取ることはできません。基礎研究の充実は不可欠ですので、研究環境を整え、研究資金獲得に私自身も努力したいと思います。
臨床研究も欠かせません。医療における研究では基礎研究と臨床研究のバランスが重要です。質の高い臨床研究の成果は、基礎研究の成果に優るとも劣らないほど重要であることを身に染みて感じてきました。臨床で問題になっているテーマを見つけ出し、前向きな研究を多施設共同で行い、その結果を専門領域のコア?ジャーナルはもとより、例えば臨床研究であればNew England Journal of Medicine、JAMAなどに投稿し、採択させることができるように願っています。本学の医学部、保健医療学部の基礎と臨床の実力を結集すればそれも高嶺の花では決してないと思います。そういった意味で、両学部、基礎、臨床問わず研究の必要性を強くアピールし、リサーチマインドを持って研究に従事する若手医療人の確保を推進したいと考えています。
●地域医療について
そのためには、推薦入試の「特別枠」、「地域枠」で入学した学生及び「北海道医療枠」で入学した学生に向けた初期研修環境の整備、準備に万全を期したいと考えております。このようにして、卒前臨床教育、初期臨床研修、専門医教育との間の有機的な連携など、学生にとってより良い学習、研修環境を提供することが必要であると思います。
その意味で、初期臨床研修後の専門医教育、特に新しい専門医制度をも見据えたバックアップ体制の構築が不可欠ではないかと思っています。現在の臨床研修センターの機能に、初期研修を修了した若手医師のキャリア形成を支援するような機能を追加したいと思っています。現在、病院には看護キャリア支援センターが設置され、看護師のキャリア形成の支援を行っていますが、その医師版を考えています。こうすることで、「特別枠」、「地域枠」、「北海道医療枠」の学生がロールモデルを探し出しやすいようになり、ひいては地域医療へより一層関与できるのではないかと期待するところです。
地域医療支援の継続と強化はこれからも大学の大きな使命です。教職員の皆さんのご支援を得ながら北海道の医療を支えていきたいと思います。そのためにも、附属病院での臨床が充実していなくてはなりません。附属病院での臨床が充実してはじめて地域医療が充実します。この原則は決して崩すことはできないと考えています。
●大学運営について
繰り返し、札幌医科大学の建学の精神に触れてきました。ここにある方向性には今後とも微塵の揺るぎもないと確信しています。大学を構成する一人ひとりはこの建学の精神を共有していると思います。したがって、多少の意見の違いは建学の精神の実践という想いの前では、大きな問題ではないと信じています。建学の精神を実践しやすい環境を作ることが私の使命でもあります。そのためにも、対話により教職員の方々から多くの意見を吸い上げる一方で、責任をもって決断するという運営を貫くつもりでいます。
学内教職員、学生の皆さんには、いつでも気軽に私に声をかけていただきたいと思います。建設的な対話は大いに歓迎です。医療は患者さんとの対話から始まり、診断、治療に至り、また患者さんとの対話に戻ります。この繰り返しです。皆さんの訪問をお待ちしています。
改めて、教職員、関係者の方々の今後のご支援とご協力を切にお願いする次第です。